受水槽と貯水槽の違いを分かりやすく解説

建物で使われる「受水槽」と「貯水槽」は似た名前ですが、それぞれ役割や用途が異なります。ここでは両者の基本的な特徴や違いについて、分かりやすくご紹介します。
受水槽とはどのような設備か
受水槽は、水道本管から送られてくる水を一時的に貯めておくタンクです。一般的にビルやマンション、病院など、複数の利用者がいる建物で多く設置されています。本管の水圧だけでは上層階まで十分に水を供給できない場合に、まず受水槽で水を受け入れ、その後ポンプで建物内各所へ送り出す方式が取られます。
受水槽の設置により、断水時などにも一定量の水を確保できるメリットがあります。サイズや容量は建物の用途や人数によって異なってくるため、設計時には使用量を見込んで選定されます。普段は目立たない設備ですが、生活用水の安定供給を支える大切な役割を担っています。
貯水槽の役割と特徴
貯水槽は、受水槽で受けた水をさらに貯めておき、主に高い場所に設置して建物内へ効率よく水を供給する役割があります。高置水槽とも呼ばれ、屋上や高い階に設けられることが一般的です。この仕組みにより、自然の重力を利用して安定した水圧で各部屋へ水を届けられるため、電力の消費を抑えることができます。
また、貯水槽があることで、万が一停電などでポンプが止まっても一定時間は水が使用できるという安心感があります。ただし、長期間の断水やトラブル時には水がなくなる可能性もあるため、定期的な確認が大切です。
受水槽と貯水槽の構造と用途の違い
受水槽は主に地上や地下に設置され、水道本管から直接水を受け取る設備です。一方で貯水槽は、一般的に建物の高い場所に設置されており、受水槽やポンプから送られてきた水をためておきます。
用途も異なり、受水槽は水の一次貯蔵とポンプへの供給の役割、貯水槽は高所から重力を利用して各フロアへ水を分配する役割を担っています。まとめると、受水槽は「水道本管からの受け皿」、貯水槽は「建物内への配水の起点」と覚えておくと分かりやすいでしょう。
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受水槽と貯水槽の管理と衛生対策

受水槽や貯水槽は、水の安全や衛生を守るために定期的な管理が必要です。ここでは、点検や清掃の必要性や法律上のポイントを整理します。
定期点検や清掃の必要性とその理由
受水槽や貯水槽は、長期間水を貯める性質から、どうしてもゴミやホコリ、藻などが溜まりやすくなります。また、タンク内の湿気はカビや細菌の発生原因になることもあり、衛生面でのリスクにつながります。
このため、定期的な点検や清掃によって内部の汚れや不具合を早めに発見し、対応することが大切です。点検内容には、水漏れやサビの有無、水質検査などが含まれます。こうしたメンテナンスを怠ると、住民の健康被害や水道法違反にもつながるため、日常的な管理が求められます。
清掃頻度と法的な義務について
受水槽や貯水槽の清掃は、1年に1回以上行うことが法律で義務付けられている場合があります。特に有効容量が10立方メートルを超える貯水槽は「簡易専用水道」とされ、水道法による管理義務が発生します。
清掃頻度の目安は以下の通りです。
- 一般的な貯水槽:年1回以上
- 大型建物や使用頻度が高い場合:半年に1回
- 使用者が多い公共施設:必要に応じて随時
これらは衛生面を守るための最低限の基準です。定期清掃の記録を残し、行政への報告が求められるケースもあるため、管理担当者はしっかりとスケジュールを組む必要があります。
清掃や点検を怠った場合のリスク
清掃や点検を怠ると、水質の悪化やタンクの劣化を招くおそれがあります。たとえば、水に不純物が混入したり、微生物が繁殖して臭いや色の異常が発生することも考えられます。
また、衛生基準を満たさなくなった場合、住民の健康に影響を及ぼすだけでなく、行政からの指導や改善命令の対象となることもあります。最悪の場合、建物全体の給水停止や損害賠償のリスクもあるため、日ごろから適切な点検・清掃は欠かせません。
建物ごとの給水方式と選び方

建物の規模や利用状況に応じて、さまざまな給水方式が採用されています。それぞれの特徴や選び方のポイントについて見ていきましょう。
ポンプ直送方式と高置水槽方式の特徴
ポンプ直送方式は、ポンプで加圧した水を直接建物内に供給する方法です。ポンプの性能により水圧を調整でき、貯水槽が不要になる場合もあります。省スペースで管理が比較的シンプルですが、ポンプが故障すると即座に断水になる点には注意が必要です。
一方、高置水槽方式は、屋上など高い位置に貯水槽を置き、重力で各部屋に水を配ります。停電時でも一定時間水が利用できる利点があります。しかし、定期的な清掃や点検の手間、設置スペースの確保が必要となります。どちらの方式にもメリット・デメリットがあるため、建物の環境や利用人数によって適切に選ぶことが重要です。
直結給水方式と貯水槽水道方式の比較
直結給水方式は、水道本管の圧力だけで建物内に水を送る仕組みです。貯水槽を設置しないため水質が新鮮で、管理の手間も少なくなります。ただし、高層建物や本管の水圧が不十分な場合は採用できません。
一方、貯水槽水道方式は、受水槽や貯水槽を利用して建物全体に水を供給します。停電時でも貯水分が活用できるなどの安心感があり、大規模な建物に向いていますが、衛生管理や定期点検が必須になります。
方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
直結給水 | 水質が良い、管理が簡単 | 水圧に制限、導入できない建物有 |
貯水槽水道 | 断水時にも備えられる | 管理・維持に手間がかかる |
マンションやビルでの方式選択のポイント
マンションやビルで給水方式を選ぶ際は、建物の高さや利用人数、設置スペース、ライフラインの安定性などを総合的に判断する必要があります。たとえば、10階以上の高層マンションでは、直結給水方式が難しいこともあり、貯水槽を使った方式が一般的です。
また、管理体制や予算も大きな要素です。貯水槽方式はメンテナンスコストがかかる一方、安定した給水が確保できます。反対に、低層で入居者数が限られている場合は、直結給水方式で十分なケースも多いです。建物の特性と利用者のニーズに合わせて、最適な方法を選択しましょう。
受水槽や貯水槽のメンテナンス依頼と業者選び

受水槽や貯水槽のメンテナンスは、安全な水環境を維持するために欠かせません。ここでは、業者への依頼の流れや選び方について解説します。
メンテナンスを業者に依頼する流れ
まず、メンテナンスが必要な内容や時期を確認し、見積もりを複数の業者から取得します。内容には、槽内清掃、水質検査、部品の交換などが含まれます。見積もりの比較で納得できる業者が見つかったら、作業日時や工程を打ち合わせて契約します。
作業当日は、業者が清掃や点検を実施し、必要に応じて写真や作業内容の報告書を提出します。作業後は水質が正常であるかも確認し、再度利用を再開する流れになります。継続的なメンテナンスを依頼する場合、年間契約にすることで管理の手間を減らせます。
良い業者を選ぶための基準と注意点
良い業者を選ぶポイントは、以下の項目を参考にしてください。
- 過去の実績や口コミが良いか
- 料金の明細が分かりやすいか
- 資格や許認可を持っているか
- サポート体制がしっかりしているか
特に、法定点検や清掃には専門資格が必要な場合もあるため、資格の有無は必ず確認しましょう。料金だけで選ばず、作業内容やアフターフォローも重視することが大切です。
報告書や記録の管理方法
メンテナンス後には、業者から作業報告書や水質検査記録が発行されます。これらは管理者がきちんと保管し、必要に応じて行政などへ提出できるようにしておく必要があります。
紙のファイルだけでなく、データ化して保存することで紛失を防ぎやすくなります。また、清掃や点検の予定をカレンダーなどで管理し、計画的な運用を心がけましょう。
まとめ:受水槽と貯水槽の違いと適切な管理で安全な水環境を守ろう
受水槽と貯水槽は、見た目や機能が似ていても、それぞれ異なる役割とポイントがあります。どちらも適切な管理を行うことで、安心して水を使える環境を保つことができます。
定期的な点検や清掃、給水方式の見直し、信頼できる業者への依頼などを総合的に実施し、建物に最適な水環境作りを目指しましょう。
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